朝日新聞(2025年6月12日)に、上廣環境日本学センター統括監督・山極寿一による「科学季評 米作 私たちを形づくる文化」が掲載されました。当センターでの活動の一環として、今年5月に山形県高畠町を訪問したときのことを回顧しながら、「米作とは単にコメという食糧の生産ではなく、日本の環境文化の根幹にかかわることではないか」と再認識を提言しています。
山形県高畠町は、江戸時代から続く自律と抵抗の精神を継承し、今も自然との共生を軸とした農業の実践が息づく“まほろばの里”です。
戦後の高度成長期における農業政策に対して、高畠町では農民詩人・星寛治さんらが中心となって「高畠町有機農業研究会」を発足し、有機農業や「自給農業」への回帰をめざしました。そうした取り組みが、結果として「自給」を超えて都市住民とのつながりをも生みだし、「有機農業の価値は環境のみならず人の心のつながりも強化してきた」ことに、山極も感銘を受けたことがつづられています。
現在、コメの価格高騰や生産政策の混乱が続いていますが、コメの生産・流通・消費の循環を図る上で重要なのは「米作文化の継承」だと述べています。水田に水を共有する里山の維持、人びとの理解や協力があってこそ、コメを作ることができるのです。
記事では、農業詩人・星寛治を中心とした有機農業運動の歴史や、「草木塔」に象徴される自然観、そして日本の米作文化が人と自然をどう結び直してきたかを、多角的に描きながら、「この『コメ騒動』を契機に、私たちのこころのふるさとを形づくってきた米作とは何かを考え直すべきなのではないだろうか」と締めくくられています。
記事本編も以下のリンクよりぜひご一読ください。上廣環境日本学センターは、日本の農業をとりまく環境についても提言をつづけてまいります。
米作に日本の環境文化の視点を 私たちの心のふるさと 山極寿一さん [令和の米騒動]:朝日新聞 (有料記事、無料でも冒頭のみお読みいただけます)