
略歴
農業経済学博士。
野菜の原産地と称される地域で調査を行い、自然資源の保全と持続可能な農業のあり方に関する調査を行ってきた。農家のローカルな伝統技術を掘り下げ、そこに新しい価値を創出し、農業の維持と環境保全の両立を目指すアクションリサーチを行い、博士論文を執筆した。こうした実践的な研究を行うためには、ただ外側から研究だけをするのではなく、自らが「変化の渦」になり、ローカル、ナショナル、グローバル、各ステージを貫くダイナミックな思考と実践を農家と共に培うことが重要と考え、以後、社会実装を重視した研究姿勢をとる。その後、国際CSAネットワーク(UGENCI)のアジア理事に就任、さまざまステークホルダーが「参加しあえる農業」について日本の有機農業運動から端を発したCSA(Community Supported Agriculture)のプロジェクトを立ち上げるなど、農と食をつなぐ実践研究に従事した。
そのほかアジア地域の10大学を繋ぎ、現地のフィールドワークやワークショップをつうじて環境問題の根本原因への理解を深め、地球環境問題の解決に向けた人材育成プログラム、イオン環境財団「アジア学生交流環境フォーラム(ASEP)」、日本・ベトナム・タイの3か国で海洋漂着プラスチックゴミの解決策を提示する「SDGsハッカソン」、上廣倫理財団寄附講座「文化から環境を考える」の講義シリーズ(早稲田大学)など、探求型学習のプログラム構築・講師を担当し、プログラムマネジメントの経験を積む。
県立広島大学では、農と食をつなぐ「ファーマーズ・テーブル」「地域資源マネジメント」の講義で里山里海のエコシステムの再生に注力し、国連平和大学と協定を結び、経営と平和学の融合による新たな教育プログラムを開発する平和経営学プロジェクト研究センターのセンター長を務め、現在に至る。
近年は、均質化する自然と人間の境界をどう再生するかについて、日本文化の基層における「自然のトポス」、「あいだのエートス」の概念整理から、「生態倫理(エコロジカル・エシックス)」の研究開発に従事し、原剛早稲田大学名誉教授より「環境日本学」を継承し、人材育成を目的に、「環境日本学」(Japan Environmental Studies)を国内外へ発信し、その普及と実践を目指している。
中国・西安交通大学、タイ・アジア工科大学、チュラロンコン大学客員教授、県立広島大学教授などを歴任。
主な著書に、吉川成美 監修・著、エヴァン・ベリー、ガイ・カヘーン、ピーター・ヒギンズ、高野孝子、デール・ジェーミソン、豊田光世、イングマー・ペルソン、グスタフ・アリニアス、ジュリアン・サヴァレスキュ、桑子敏雄、吉川成美共著『クライメート・チェンジ—新たな環境倫理の探求と対話』(清水弘文堂堂書房、2018年)、西川潤、藤井絢子、マルク・アンベール、雨宮裕子ほか『共生主義宣言—経済成長なき時代をどう生きるか』(コモンズ出版、2017年)、関良基、向虎、吉川成美共著『中国の再森林化—社会主義と資本主義を超えて』(お茶の水書房、2016年)等。
English translation is available : English (英語)