国際会議「Living Together: Human -Wildlife Relationship in a changing world」開催
9月11日(バンガロール、インド)
2025年9月11日、インド理科大学院(IISc)との共催により、国際会議「ともに生きる:変動する世界における人と野生生物の関係―共生の生態学的・倫理的・文化的側面を探る」(英題 Living Together: Human–Wildlife Relationships in a Changing World)を、会場とオンラインのハイブリッド形式で開催しました。
本会議では、気候変動や土地利用の変化が進む現代において、人間と野生生物が共に生きるための多様な視点を探究しました。ラマン・スクマール名誉教授(IISc)は、人新世における象と人との共存の歴史的課題と文化的側面を紹介し、山極壽一所長(RIHN)は、日本での霊長類学とアフリカでのゴリラ研究の経験を通して、人と自然の相互作用が文化となる重要性を強調しました。
セッションIでは、ヴィディヤ・アスレヤ博士(Wildlife Conservation Society, India)がインドにおける大型動物と人間の文化的関係性を論じ、鈴木真理子専門員(環境省 奄美群島国立公園管理事務所)は奄美大島での希少種保全と地域社会のあいだに生まれる新たな軋轢について発表しました。サンジータ・シャルマ・ポカレル特定助教(京都大学白眉センター)は、人間活動によって変化した景観の中で生きる象の物語を通し、地域住民の参加と利益還元の必要性を指摘しました。
セッションIIでは、シンドゥ・ラダクリシュナ教授(NIAS, India)がインドの文化的多様性と霊長類の共存を紹介。ナチケータ・シャルマ研究員(IISc)は象の「死」をめぐる認知科学的視点を提示し、村上泰教客員准教授(RIHN)は日本仏教における「一切衆生への回向」という共生の視座を示しました。コメンテーターの神明竜平氏(作家)は、東洋思想における分断と真実の問題について発表し、共生を支える多様な倫理的・哲学的基盤が探求されました。
全体討論では、人と野生動物の共存は単なる生態学的問題にとどまらず、文化・経済・政治を含む複合的な課題であること、そして持続可能な共生には学際的な知見と地域社会の価値観を統合するアプローチが必要であることが確認されました。
吉川成美センター長(RIHN)による閉会挨拶では、国や分野を越えた連携の重要性が再確認され、本会議の意義が改めて強調されました。
続く9月12―13日は、スクマール名誉教授の長年の調査地であるバンディプール国立公園とムルドアイ国立公園を訪問し、野生生物のフィールド調査を行いました。
初めて見る野生象の群れに感動しながらも、彼らが人間の居住域に出没する現状を知り、人間にとって野生生物とは何か、お互いを尊重し共に生きることの難しさと可能性について深く考える機会となりました。
















